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「芒種(ぼうしゅ)」、米や麦など芒(のぎ)のある植物の種をまく時期。この頃から本格的な梅雨が始まります。芒種にぴったり梅雨が来る、昔の人の暦を読む正確さには毎年驚かされます。
梅雨は、日本の北側にあるオホーツク海高気圧と南の海上にある太平洋高気圧の境目で長いこと梅雨前線が停滞することで長い雨をもたらします。この時期、雨が降り続けて湿度が高いことによって、元々胃腸が弱い人は、お腹を下す・吐き気がする・食欲不振などのトラブルに見舞われることがあります。

今回はお腹が弱い人へ、蓮の葉で炊く蓮の実とハトムギの玄米ごはんをご紹介したいと思います。

人間は湿度の高い環境下にいると、うまく汗をかくことができずに、体内に余分な水分を溜め込んでしまいます。
トラブルを起こすような余分な水分を湿邪(しつじゃ)といい、重だるい・頭がぼーっとする・めまいがするなどの不調に見舞われることがあります。また水分を消化吸収しきれずにお腹を下したり、吐き気がするなどの胃腸トラブルに見舞われる人もいます。

梅雨時期のトラブルに見舞われないようにするためには、余分な湿邪を体の外に追い出して、巡らせることが大切です。
体が冷えていると汗をかくことができないため、冷房で体を冷やしすぎたり、冷たい飲食を摂りすぎたりしないようにしましょう。また、発汗できるように適度に運動するように心がけましょう。

梅雨の頃に盛りを迎える蓮は、泥から出てきても汚れなく清らかに生き、どんな逆境にあっても美しく乗り越えていくことの象徴であるとし、仏教やヒンズー教などを信仰している人の多いベトナムやインドなどの国では、蓮の花が国花とされている国もあります。
また蓮の最大の特徴は、根、葉、種子などほとんどの部位に薬効があることで、漢方薬にも使われています。

夏が盛りの蓮ですが、葉を乾燥させてものを生薬では「荷葉(かよう)」と呼ばれています。荷葉には「清暑利湿(せいしょりしつ)」の効果があります。
これは、体の中の余分に溜まった水分や、熱を体の外へと出してくれるというものです。蒸し暑さで、頭が張ったりぼーっとしたりするなどの症状を改善してくれるので、蒸し暑い季節には重宝します。

一般的に売られている「蓮茶」と呼ばれるものは、緑茶の蓮の花の香りづけをしているもので、蓮の葉と異なりますのでご注意ください。
また蓮の葉は、お茶として普段から取り入れるのがおすすめです。

蓮の種の部分は生薬では「蓮子(れんし)」と呼ばれ、薬膳菓子によく登場します。消化吸収を司る「脾」の機能が落ち、お腹を下している時に、下痢止めとしての効果があります。
夏になると、精神意識活動を担っている「心」の機能が弱って、気持ちが落ち着かずに眠れなくなることもあります。蓮子は気持ちを落ち着けて、眠りの質を上げる生薬として重宝されてきました。炊飯器でごはんと一緒に炊くだけで簡単に生活の中に取り入れることができます。

薏苡仁(よくいにん)は、ハトムギの種皮を除いた成熟種子で、体のむくみをとる薬膳食材の代表格です。湿邪が脾に停滞することで、起きる下痢や軟便を改善してくれます。
また、昔からいぼに使われており、ハトムギを毎日食べることで、いぼがなくなったという話も聞きます。ご飯と一緒に炊いたり、茹でたものを冷凍しておいて必要な時に解凍し、サラダに使って頂くのもおすすめです。

これら蓮の葉や蓮の実や薏苡仁は、漢方薬局や中華街、インターネットなどで買い求めいただくことができます。乾いた状態で売られているため、保存が効くので、持っておいて体調に合わせて使うことをおすすめです

材料

玄米 … 2合 / 蓮の実 … 450g / 蓮の葉(お茶用) … 3g / 蓮の葉(包む用) … 1枚 / 薏苡仁 … 30g / 酒 … 大さじ1 / 米油 … 小さじ1 / 塩 … 小さじ1 / 出汁用昆布 … 10cm

下準備

玄米を一晩、浸水させておく。
フライパンにお湯を沸騰させて、蓮の葉(包む用)を柔らかい状態にしておく。

作り方
手順① 蓮の葉(お茶用)に600ccの湯を注ぎ、3分程度蒸らす。
手順② ①のお茶と浸水させておいた玄米、昆布、酒、米油、塩、蓮の実、薏苡仁を炊飯器に入れて炊く。
手順③ 炊き上がったら蒸し器に蓮の葉を敷き、炊き上がった玄米ご飯をのせ、蓮の葉で包む。
手順④ 鍋に水を入れ沸騰させ、蒸し器をのせる10分ほど蒸らす。
手順⑤ 蒸らし終わったら、お皿に蓮の葉が巻かれたご飯をひっくり返して、綺麗な丸が見れる方を上にしておしまい。

食欲がない時には、チャーシューを入れたり、酒を紹興酒、米油をごま油に変えて炊いても食欲が増しておすすめです。


田村 英子 EIKO TAMURA

2010年 東京薬科大学薬学部卒業
・薬剤師
・国際中医薬膳師(北京中医薬大学薬膳課卒業)
・「カラダを変える12か月の薬膳」主宰
大学卒業後3年間は調剤薬局に勤務した後、東洋医学の世界に可能性を感じ飛び込み。
漢方相談薬局の老舗「東西薬局」に就職、中医師・菅沼栄、林建豫先生などに師事し中医学を学ぶ。
その後、帯津三敬塾クリニックで漢方・森田療法・ホメオパシー・気功を用いた癌や精神疾患の患者のケアに関わりより広い統合医療を知る。統合医療学会の企画運営や薬剤管理責任者として従事する。
現在、漢方養生堂、富士堂に所属。
カウンセリングで多くの患者と向き合う中、漢方を飲む以前の食習慣を含めた生活習慣の問題をどう立て直し、定着させるかがずっと課題で、本人に納得してもらい、自立して健康管理をしていくために「カラダが変わる12か月のズボラ薬膳」を主催する。