11月17日、Innovation Springs(和歌山県白浜町)にて、日本の種子を守る会アドバイザーの印鑰智哉(いんやくともや)さんを講師にお招きして「種子法廃止 私たちの食はどう変わる?!」というテーマで講演会を開催しました。
昨年4月に種子法(主要農産物種子法)が廃止されて以降、農業競争力強化支援法が新たに制定されたり、今また種苗法が改定されようとしていたり…。
それでもメディアがニュースとして全く取り上げないせいで、農業や関連産業に従事している人以外は、ほとんどの人たちが自分たちとは関係ない話…、と感じているけれど、実は遺伝子組み換えやゲノム編集された作物・食品が無規制に、そしてどれが危険な食品なのか知ることも選ぶこともできないまま、私たちの食べるものに入ってきてしまうことに繋がっていってしまいます。
そんな状況を打破していく一つの方法が、種子法に変わる種子条例を行政レベルで制定していき「自分たちの種子は自分たちで守る!」ことなのですが、当店の本社がある和歌山県では国の方針に従って、自主制定にはほど遠いような状況であることに危機感を感じて、まずは多くの人に知ってもらうことが大事!という思いで企画したイベントでした。
当日集まっていただいたのは、20代~70代まで幅広い年代の50名を超えるお客様。
農家さんの参加が多かったのですが、会社員のほかお子様連れの主婦の方や学生さんも参加されていました。
企画・募集当初はタイトルにもあるように、種子法が廃止された背景や影響に関する内容を主に考えていたのですが、その後世の中の動きが急変してきて、特に研究者の間では“New GMO”(新しい遺伝子組み換え)と呼ばれている“ゲノム編集作物・食品”が、10月から“表示義務なく”解禁されてしまったという“大事件”が発生していることから、講演の主題を遺伝子組み換えとゲノム編集に重きを置いてお話いただくことになりました。
以下、当日のテキストの一部を抜粋してご紹介します。
まずは、私たちの地球がどのような星なのか。長い年月をかけてどのように命を育んできたのか。微生物が果たしてきた(果たしている)役割について。
そして、その微生物の働きを阻害する“化学肥料”の影響と、化学肥料を使うが故にセットで使わなければならなくなった“農薬”のお話。
元々は農業とは関係のなかった化学企業が、種子+化学肥料+農薬を3点セットで売り出していく工業型農業(緑の革命)と、それによる世の中の変化や農業のあり方の変化について。
そしてアメリカを中心に“第二次緑の革命”と言われる遺伝子組み換え農業が始まった1996年以降の、様々な健康被害について詳細なデータを基に解説いただきました。
そして、直近の話題でもある“ゲノム編集作物・食品”について、巷で言われている“ゲノム編集は自然界の突然変異と同じだから安全”というウソについて、ゲノム編集とは何か?という基本的な知識から、どのようなリスクが考えられるのか、わかりやすく解説いただきました。
但し、印鑰先生はゲノム編集という技術そのものを否定しているのではなく、まだそのほとんどが未知のものである遺伝子のことを知るための研究技術としてのゲノム編集は評価されており、現時点では研究分野で使用するに留め置くべきという考えです。
ほぼ無規制の状態でゲノム編集食品が解禁されてしまったこと、日本の食糧安全保障に極めて不利な日米貿易協定(FTA)が間もなく採決されてしまう見込みであること等々、大きな転換期を迎えつつある最中での講演会でしたので、私たち一般市民一人ひとりが知識を持ち、選択していくことの大事!と、印鑰先生の講演も当初の90分の予定を20分以上もオーバーする熱の入りようでした。
それでも語りきれない、参加者の質問に答えきれないということで、全てのプログラムが終了したあとも、帰りの飛行機の時間ギリギリまで残っていただき、茶話会形式で参加された方からの質問に丁寧に丁寧にお答えいただきました。
参加者の皆様からアンケートでお答えいただいた講演会の感想について、一部ご紹介します。
食文化が恐ろしいことになってきている事実にびっくりしました。植物の力や地球環境の事も知る事が出来、参加してよかったです。
とても分かりやすく興味深く聞かせていただきました。遺伝子組み換え作物の恐ろしさもわかりました。普段は有機野菜や添加物の入ってない食品をなるべく選んでいますが、子供が赤ちゃんだった頃に飲ませていた粉ミルクにこんなに遺伝子組み換えのものが含まれていました。赤ちゃんが飲むものに遺伝子組み換えが使われているのは本当にひどいです。
日本がGMOのゴミ捨て場になるという忠告、子供たちのことを考えると大人が真剣に考えていくことが大事。周りに広めていかないと、と思う。今回知り合いを誘って参加しましたが、もっと多くの方に知らせるために再講演を期待します。
こんな大事な話はもっと多くの人に聞いてほしい。今日聞いた話をこれから周囲にも伝えていきたい、というような感想も沢山いただき、まずは知っていただくことから!と企画したイベントは、ひとまずの目的は達せられたのかな?と思います。
ですが、一度きりで終わらず、繰り返し繰り返し何度もこうした機会を設けて、一人でも多くの人が問題意識を持って、小さなことからでもアクションを起こしていけるようになっていけば…と思います。