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今年も残すところわずかとなりました。
冬を「閉蔵」と言い、万物が成長を止める時です。冬は発散を控え心穏やかに過ごすのが養生に繋がりますが、何かと忙しい12月、生物本来の営みとは逆行する現代社会では過度に働きすぎることで「腎」の力を弱めてしまいます。
この腎は成長・発育・水分代謝・ホルモンバランスなどアンチエイジングに関係している機能系統のことで、西洋医学でいう腎臓・副腎・生殖器を含む内分泌系などに当たります。

冬は腎の力が弱り老化が進んでしまいがちな季節です。冬に腎を養う味覚は「鹹(かん)」、塩やミネラル分などが腎の機能を調整してくれます。

冬は腎の力が弱り老化が進んでしまいがちな季節です。冬に腎を養う味覚は「鹹(かん)」、塩やミネラル分などが腎の機能を調整してくれます。
今回はミネラル豊富な冬の食材、牡蠣の玄米たまご雑炊をご紹介させていただきます。

生の魚介類を食べない欧米の食文化圏でも、牡蠣は唯一生食で食べられています。日本では縄文時代から食されており、貝塚から沢山の貝殻が発見されています。



そして牡蠣は雄から雌に性転換をする不思議な生物です。宇宙の全てが陰と陽の二つの要素を持つとした中医学の世界の中で、牡蠣は雌雄という陰陽の要素を持つ特殊な生物なのです。

牡蠣の貝殻は「ボレイ」と呼ばれ、カルシウムを豊富に含んでいて「桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)」など不安や不眠に対する漢方薬に用いられます。




その他にカルシウムイオンが胃酸を中和するため、「安中散」という胃の痛みに効く漢方薬にも用いられています。

牡蠣の身の部分は乳白色をしており、栄養豊富なことから「海のミルク」などとも呼ばれています。薬膳では「血」や「潤い」を補い、神経を鎮め、体力を回復するという効果があります。

栄養学的にはパワーの源になるグリコーゲンや亜鉛・鉄などのミネラル分、ビタミンB群などを補ってくれます。この中でも注目したい栄養素が亜鉛です。亜鉛は新陳代謝に関係する酵素やホルモンなどのタンパク質を合成したり、遺伝情報を伝えるDNA転写に関わっています。

忙しい年末に腎を養い、体力を回復させて、そわそわした気持ちを落ち着けてくれる食材ですので、積極的に摂りたい食材ですね。

鶏卵は五臓の全てを養う食材。「アミノ酸スコア」が100で必須アミノ酸をバランスよく含み、効率的にアミノ酸を供給することができます。また薬膳的には「血」や「潤い」を養い疲労回復を助けてくれる食材です。

疲れが出やすい年末ですが、あと一息です。体をしっかり補って、残り僅か乗り切りましょう!

食材の薬膳的効能


牡蠣の玄米たまご雑炊

材料

牡蠣 50g / たまご 1個分(溶く) / 三つ葉 少々 / 出汁 300cc / 玄米ごはん 200g(炊いたもの) / 塩  適量 / 酒 大さじ5

作り方
手順① 牡蠣と酒(大5)を鍋に入れ、牡蠣に火が通ったら汁と牡蠣の身を分ける。
手順② 出汁300ccと玄米ごはん、①の汁を鍋に入れ、火にかける。
手順③ ごはんが柔らかくなったら、②の牡蠣の身を入れ火を止め溶き玉子を入れる。
手順④ 最後に三つ葉を散らして出来上がり。

牡蠣に含まれるビタミンB群は水溶性ビタミンです。火にかけた際、水に溶けて流れ出てしまうので雑炊やスープにして一緒に食することをお勧めします。


田村 英子 EIKO TAMURA

2010年 東京薬科大学薬学部卒業
・薬剤師
・国際中医薬膳師(北京中医薬大学薬膳課卒業)
・「カラダを変える12か月の薬膳」主宰
大学卒業後3年間は調剤薬局に勤務した後、東洋医学の世界に可能性を感じ飛び込み。
漢方相談薬局の老舗「東西薬局」に就職、中医師・菅沼栄、林建豫先生などに師事し中医学を学ぶ。
その後、帯津三敬塾クリニックで漢方・森田療法・ホメオパシー・気功を用いた癌や精神疾患の患者のケアに関わりより広い統合医療を知る。統合医療学会の企画運営や薬剤管理責任者として従事する。
現在、漢方養生堂、富士堂に所属。
カウンセリングで多くの患者と向き合う中、漢方を飲む以前の食習慣を含めた生活習慣の問題をどう立て直し、定着させるかがずっと課題で、本人に納得してもらい、自立して健康管理をしていくために「カラダが変わる12か月のズボラ薬膳」を主催する。