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秋を穏やかに過ごしたい人へ

暦の上では「白露(はくろ)」、日中は暖かく日が暮れると涼しくなり、一日の気温差が激しくなる頃で、草木に朝露が見られるようになります。涼しく乾燥した大気が身を包み、乾燥に弱い「肺」が最も影響を受ける時期です。
「肺」は呼吸器全般を担う機能系統のことで、この時期、空咳や鼻詰まり、皮膚の乾燥による痒みなどのトラブルを起こしやすくなります。秋に採れる果実は、乾燥から「肺」を守る作用があり自然界から恵みをもたらします。

今回は今が旬の梨を使い、秋に起こりがちなトラブルを予防する玄米レシピをご紹介します。

中医学では人間も自然界の一部と考え、我々は自然界で起こる「風・暑・湿・燥・寒・火」の影響を受けて生きています。



また、感情も季節の影響を受けるというのが中医学の面白いところで、夏の華やかだった陽の時期から静かな陰の時期に転ずる秋は、精神的にもの悲しく、感傷的になりがちです。
これが適度であれば静かな時を過ごすことができるのですが、肺が弱いと悲しさや空虚感が強く出てしまうこともあります。

そんな季節に対応するためには、今が旬の食材「梨」や「ぶどう」「いちじく」「すだち」かぼす」などの、肺を潤す食材や、「きのこ」「さつま芋」「くり」などの木を養う食材を、毎日上手に取り入れることが大切です。

梨が日本で食べられるようになったのは弥生時代、登呂遺跡から多数の種子が見つかっています。



日本で最も古く栽培されている果実の一つで奈良時代に出来上がった歴史書「日本書紀」にも五穀と共に栽培が推奨されていたという記載があります。
梨の水分量は88パーセントでその水々しさによって肺の渇きを潤してくれます。中国北部では「秋梨膏」という梨の果汁を煮詰めてトロトロにしたものをお湯で割り、喉痛の風邪の時に用い家庭の常備薬として重宝されているようです。

夏から秋に移り変わる初秋はやや暑さも残るため、梨の体の熱を冷ます性質を上手く利用したいものですね。

和食につきもののすだちですが、最も旬なのは今時期です。日光をたっぷり浴びて育った露地物のすだちは8月から9月に収穫されて市場に出回ります。




また薬膳では「理気」や「開胃」という作用があり、憂鬱になり食欲がなくなってしまった人の気を巡らせ、食欲を出すという効果も期待できます

食材の薬膳的効能


梨とすだちの玄米粥

材料

玄米       … 1/2合
梨        … 2個
すだち      … 1個
水        … 320ml

作り方
手順① 玄米を浸水させて一晩おく。く
手順② 梨1個をすり下ろす。もう1個は2センチ角になるように切る。
手順③ 鍋に分量の水を入れ沸騰したら玄米と梨を全て入れる。再び沸騰したら蓋をし弱火にしてから30分火にかける。30分経ったら火を止め10分蒸らす。
手順④ 器に移してからすだちのスライスを載せて完成。

田村 英子 EIKO TAMURA

2010年 東京薬科大学薬学部卒業
・薬剤師
・国際中医薬膳師(北京中医薬大学薬膳課卒業)
・「カラダを変える12か月の薬膳」主宰
大学卒業後3年間は調剤薬局に勤務した後、東洋医学の世界に可能性を感じ飛び込み。
漢方相談薬局の老舗「東西薬局」に就職、中医師・菅沼栄、林建豫先生などに師事し中医学を学ぶ。
その後、帯津三敬塾クリニックで漢方・森田療法・ホメオパシー・気功を用いた癌や精神疾患の患者のケアに関わりより広い統合医療を知る。統合医療学会の企画運営や薬剤管理責任者として従事する。
現在、漢方養生堂、富士堂に所属。
カウンセリングで多くの患者と向き合う中、漢方を飲む以前の食習慣を含めた生活習慣の問題をどう立て直し、定着させるかがずっと課題で、本人に納得してもらい、自立して健康管理をしていくために「カラダが変わる12か月のズボラ薬膳」を主催する。