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八月七日、「立秋」を迎え、この日を境に秋へと季節が移りますが、秋とは名ばかりで、「暑さ」をピークに感じる人も多いのではないでしょうか。夏の疲れが出始めると同時に乾きを感じ始める頃でもあります。
夏の終わりから秋にかけて「気陰両虚(きいんりょうきょ)」と言われる体質が見られ、なんとなくだるい・動きたくない・食欲がないなどの「気虚」の症状に、口の中が乾燥する、皮膚が乾燥する、熱がこもって火照るなどの「陰虚」の症状が合わさります。
疲れを感じると同時に食欲が落ち、簡単な喉越しのいいものを食べてしのぐ人も多いのですが、ここで体力や乾きを解消できる「気」や「陰」を補う食材を選ぶことが、この後迎える秋を快適に過ごすために役立ちます。

今回は、疲労回復を助け、乾きを潤す冬瓜とアジを使った「玄米の冷や汁」をご紹介したいと思います。

冷や汁は出汁と味噌で味付けした宮崎県や山形県などの郷土料理で、地域によって少しずつ作り方が違います。
冷や汁の始まりは鎌倉時代、当時の書物に味噌で味付けした汁物という記載があり、僧侶達により全国に広まりました。また、農家の人達にとって、時間がない時に簡単に食べられ、栄養価の高い「農民食」として親しまれるようになりました。単なる冷めた味噌汁とは違い、少し手間がかかりますが、魚介をすり潰して使うことで、地域によって夏バテ予防の食事としても親しまれています。
鯛やいりこを使って、作られることもありますが、今回は鯵のひらきを使います。

ヘチマ・きゅうり・かぼちゃ・冬瓜・スイカなどの瓜科植物は巻きひげを持つつる性の草本からなります。
夏の火照りや乾きを改善しつつ、むくみなど余分な水分を代謝する瓜科植物。独特の苦味は、モモルデシチンによるもの、薬膳では苦味は熱を取り去る作用があるとします。
夏のほてりや乾きは、潤い不足により相対的に熱をおびるために引き起こされます。単純に冷やして熱を取ればいいというわけではなく、潤すことでほてりや乾きを鎮めていきます。そのためには冬瓜やきゅうりなどの瓜科植物は、熱を取り去り、体を潤してくれるため、今の季節には欠かせない食材なのです。

「冬瓜」は夏に収穫される瓜科の代表的食材ですが、夏の食材なのにこの名前がついたのは、皮をむかずにそのままの状態で保存すれば冬までもつことからだそうです。
また、薬膳の基本の五味以外に「淡味(たんみ)」という味覚がありますが、薄くあっさりした味で、「余分な水を巡らせ、むくみを取る」効果を期待できます。きゅうりやハトムギ、冬瓜などの瓜科植物が「淡味」の食材にあたります。

特にきゅうりは90パーセントが水分で、ミネラル分も豊富、汗で失われるミネラルを補給してくれるのに役立ちます。むくむけれども、乾きがある、水分が偏在する時には是非積極的に食べてみてください。

材料

玄米ごはん … お茶碗4杯 / 鯵の開き … 1枚 / 味噌 … 80g / 冬瓜 … 1/4個 / きゅうり … 1本 / 豆腐 … 1/4丁 / 出し汁(鰹出汁) … 600cc / 白胡麻 … 適宜

作り方
手順① 冬瓜の皮をむき、出し汁600ccで柔らかくなるまで煮る。
手順② ①の冬瓜が柔らかなくなったら、火を止めてミキサーにかける。
手順③ 鯵の開きをグリルする。焼きあがったら骨と皮を取り除く。
手順④ ③をすり鉢に入れて、すりこぎで細かくする。味噌80gを入れてさらに擦る。
手順⑤ ④を弱火にしたフライパンに入れて、途中焦げないようにへらで攪拌しながら味噌の水分がなくなるまで焼く。
手順⑥ ⑤を器に移し、②の冬瓜の出し汁を少しずつ加えて味噌を溶かす。
手順⑦ 小口切りにしたきゅうり、千切りにした紫蘇、水抜きした豆腐を手でちぎって加え最後に、炒った白胡麻をかける。
手順⑧ 器に玄米をよそい、⑦をかけて完成

田村 英子 EIKO TAMURA

2010年 東京薬科大学薬学部卒業
・薬剤師
・国際中医薬膳師(北京中医薬大学薬膳課卒業)
・「カラダを変える12か月の薬膳」主宰
大学卒業後3年間は調剤薬局に勤務した後、東洋医学の世界に可能性を感じ飛び込み。
漢方相談薬局の老舗「東西薬局」に就職、中医師・菅沼栄、林建豫先生などに師事し中医学を学ぶ。
その後、帯津三敬塾クリニックで漢方・森田療法・ホメオパシー・気功を用いた癌や精神疾患の患者のケアに関わりより広い統合医療を知る。統合医療学会の企画運営や薬剤管理責任者として従事する。
現在、漢方養生堂、富士堂に所属。
カウンセリングで多くの患者と向き合う中、漢方を飲む以前の食習慣を含めた生活習慣の問題をどう立て直し、定着させるかがずっと課題で、本人に納得してもらい、自立して健康管理をしていくために「カラダが変わる12か月のズボラ薬膳」を主催する。