昨日11月20日から明日22日まで、東京ビッグサイトではアグロ・イノベーション2019( https://www.jma.or.jp/ai/ja/ )が開催されています。
会場内では農業に関する様々なテーマのセミナーが開催されているのですが、その中で気になるセミナーを見つけました。
「なぜ主要農産物種子法は廃止されたのか?~需要に応える種子生産に向けて~」というタイトルで、農林水産省の方が講師として解説されるということで、これは巷で色々言われていることとは別の、実は深~い理由が聞けるのかも知れない、と思っていってきました。
今日はとってもいい天気でした。
セミナーを聴講して、結論から言うと???という感じでした。
最後に質疑応答の時間を設けることもなく終了してしまいました。「なぜ質問させないんだ!?」と声を上げている方もいましたが…。
説明してくださったのは、農林水産省政策統括官付穀物課企画班のK企画係長さん(アグロ・イノベーションのサイトには名前が出てますので伏字にしなくてもいい気もしますが、一応…)でしたが、要約しますと、
1. | 種子法が制定された当時と違い、現在は高品質なブランド米が増えている一方で、家庭でのお米の消費量・需要は減り続けている。 |
2. | お米の需要が伸びているのは中食・外食の市場。でもそこで求められているのは、安くてそこそこのお米なので、高品質・高価格なブランド米の需要はない。 |
3. | 国としては中食・外食市場に向けた、主に民間企業が作っている、安くてそこそこの品質の多収品種のお米を作っていくようにしたい。 |
4. | みつひかり・つくばSDなど、民間企業が作っている多収品種のお米は15品種ほどあるが、現在はほとんど作られていない。全体の0.8%程度。 |
5. | また世の中に出回っているお米の97%が各自治体が奨励品種に指定した品種で、奨励品種に指定されなければ農家さんが種子を入手することが困難で広まっていかない。 |
6. | 民間企業の品種も奨励品種になりたいと思っているが、種子法の定めにより奨励品種の原原種・原種は厳しく管理・保全されることになり、予算も手間もかかるのでハードルが高い。 |
7. | 地方自治体の自由度を奪っている種子法を廃止することで、民間企業の多収品種の種子も入手しやすくする。 |
8. | 民間企業の種子は、公共の奨励品種の種子よりも高いけど、化学企業による農薬と肥料をセットにした技術支援もあるので収穫量が多く見込めるので、結果農家さんの収入は安定する。 |
という説明でした。
何かおかしくないですか?????
そもそも民間企業のお米が奨励品種になれないというのはウソで、みつひかりもつくばSDも実際に奨励品種になっています。奨励品種になっているにも関わらず、それを作りたいという農家さんが少ないだけの話です。
さらに種子法というのは、原原種・原種の種子を守っていくことが求められている法律ですので、米の需要が減ってきたから、民間企業のお米を使ってほしいから廃止するというのは、全く理屈に合いません。
一度失ってしまった種子は二度と取り戻すことはできなくなりますので、需要が減ろうが増えようが、種子の保護という観点では無くしてはいけない施策・法律のはずです。
まして他方で言われているような、種子法を廃止しても民間企業に種子の管理を委託するから大丈夫なんて話も、自分たちが説明したように原原種・原種の管理には費用と手間がかかるわけですから、営利を目的とした民間企業がそうした種子の管理をし続けることができるわけがありません。だからこそ、営利目的ではなく行政が責任を持ってやるべきことなんではないでしょうか?
穿った見方をすると、民間企業の品種のために、公共品種を守っている種子法を廃止して立ち枯れさせてしまおうというようにも見えます。大阪夏の陣で総堀を埋めて攻めやすくしたみたいな???
11月17日:印鑰智哉さんの講演会資料からの抜粋
さらに驚いたのは、種子法を廃止して地方自治体の自由度が上がったことによって、独自の種子条例を制定する自治体が13もできたと、こうした動きがまるで農林水産省の狙い通りであるかのような説明をされていたことです。
全国で独自の種子条例の制定のために奔走されている人が聞いたらどう思うんでしょう?
今日の説明を聴いて納得した方がいるのでしょうか?質疑応答の時間を設けずに、ササッとセミナーを終了させてしまったのも、そうした意見や質問が出てくるのを回避したかったから、、、と思われても仕方ないように思います。
この方は本当に農林水産省の方なんでしょうか?二言目には「民間」「民間」と言ってて、本当は経済産業省の方だったのかも知れません。
最後は嫌味で締めさせていただきます。すみません。