新型コロナウィルス感染拡大の影響で今年の春は一生忘れられない春になりました。感染拡大に不安を感じながらも、桜の便りに心を和ませております。どんな状況であろうと、季節は確実に進んでいるのですね。
春の陽気につられて、外出したくなる気持ちも分かりますが、外出を慎むことも今は大事な養生。今回は、自粛する中、発散できずにいる人にストレス発散を助ける薬膳の知恵を取り入れたレシピを紹介していきたいと思います 。
春の養生のポイントはのびのびと過ごすこと 。
外出自粛に加え、気圧の変化、4月からの転勤や部署異動、進学などの環境変化があり、ストレスを感じている人も多いでしょう 。
春は五行学説だと「肝」に属する季節です。この「肝」は体の隅々まで栄養を運んでくれる「血」を蓄えているところ。また、気や血の流れを調節し、自律神経を整えているところでもあります。
ストレスが長引くと、肝の機能は失調し、気の流れが滞ってしまいます。この状態を「気滞」(きたい)と言い、いらいらして人の意見に反発したくなったり、憂鬱になって自分らしく過ごせないなど情緒不安定になりがちです。
また、頭痛や肩こり、歯ぎしり、ため息をつくなどの症状も見られるようになります。
春はのびのびと過ごし、ストレスを溜め込まないことが養生のポイントなのです 。
ここで、肝の機能を助けて気の流れを良くする食材をいくつか紹介させて頂きますね 。
ストレスに弱い人は「血」を補う食材を摂りましょう
春になるとぷっくりと身の大きなあさりが出回りますが、あさりは春と秋の年に二回旬があります。薬効を考えても春に摂るのがおすすめです。
あさりは、「血」を補い、貧血に効果のある食材です。肝にたっぷり血を蓄えている状態ですと、肝はしっかり機能し、気の流れがスムーズになります。
あさりの他にも、はまぐりやしじみや牡蠣、ホタテなどの貝類は血を養う効果があるものが多く、ストレスやプレッシャーに弱いという人は、毎日のお味噌汁やスープに入れるなど積極的に取り入れてみて下さいね。
ストレスを感じたら香りのある食材でリラックスしましょう。
セロリは独特の香りが特徴ですが、その芳香成分のアピインは気の流れを良くし、精神を安定させてくれます。またいらいらが続くことで現れる高血圧やのぼせ、頭痛、目の充血などにも効果が期待できます。
その他、いらいらする人におすすめの食材は、三つ葉やパクチー、パセリ、柑橘類などの香りのある食材です。
漢方にも使われる茴香(フェンネル)で気を巡らせてリラックス
今回は独特な香りで魚介との相性が抜群のスパイス、茴香(フェンネル)も使っていきたいと思います。
茴香は漢方薬の「安中散」にも含まれるスパイスですが、胃腸を刺激することで、消化管の運動をよくし、吐気を抑えたり、食欲を増進させる効果があります。
あさりやセロリは冷やす性質なので、茴香の温める性質を取り入れて全体のバランスを取っていきます。
芳香成分アネトールは気の巡りを良くし、リラックス効果も期待できます。普段のお茶に少量、混ぜて飲んで頂くのもおすすめです 。
あさり・セロリ・ 茴香の薬膳的効能
あさりとセロリの玄米リゾット
材料(2名分)
あさり … 50g
セロリ … 10cm
茴香 … 小さじ1/2
オリーブオイル … 大さじ1
玄米ごはん … 300g(炊いたもの)
白ワイン … 50cc
作り方
手順① | ① あさりを砂抜きし、鍋にいれ白ワインを加え蒸す。あさりの口が開いたら、あさりを取り出し、汁とあさりを分ける。 | 手順② | ② 鍋にオリーブオイルを入れ、茴香を炒める。茴香の香りがしてきたら、酵素玄米ごはんを加え、①の汁を加え、鍋底が焦げないようにかき混ぜながら汁気を飛ばす。 |
手順⑤ | ③ 最後にセロリを加え、火が通ったら器に盛って、①のあさりを載せて完成。 |
田村 英子 EIKO TAMURA
2010年 東京薬科大学薬学部卒業
・薬剤師
・国際中医薬膳師(北京中医薬大学薬膳課卒業)
・「カラダを変える12か月の薬膳」主宰
大学卒業後3年間は調剤薬局に勤務した後、東洋医学の世界に可能性を感じ飛び込み。
漢方相談薬局の老舗「東西薬局」に就職、中医師・菅沼栄、林建豫先生などに師事し中医学を学ぶ。
その後、帯津三敬塾クリニックで漢方・森田療法・ホメオパシー・気功を用いた癌や精神疾患の患者のケアに関わりより広い統合医療を知る。統合医療学会の企画運営や薬剤管理責任者として従事する。
現在、漢方養生堂、富士堂に所属。
カウンセリングで多くの患者と向き合う中、漢方を飲む以前の食習慣を含めた生活習慣の問題をどう立て直し、定着させるかがずっと課題で、本人に納得してもらい、自立して健康管理をしていくために「カラダが変わる12か月のズボラ薬膳」を主催する。